アオイホシ(再up)

「朝焼けの海を見せてやるよ」

私と彼がつきあい始めて一年たつその日。店長にばれないように、バイト先で彼はそうささやいた。

いつもの彼の気まぐれなのに、やっぱりいつも私は有頂天で、閉店時間まで働く彼が迎えにくる前に念入りにお風呂に入ってしまう。

そんなこんなで深夜一時。

厳しい親にばれないようにこっそりと家を出て、少し離れた路地裏で待ってる彼の車に飛び乗る。

走り出す車は南へと向かう。

二人の好きな歌をBGMに、ついつい歌っちゃう声も大きくなってた。

もう夏も終わり。途中のコンビニで売れ残ってる花火をいっぱい買って、真っ暗な砂浜でふざけあう。

どこまでも吸い込まれそうなくらいの漆黒が時々怖くて、無理にはしゃいでみたり。

線香花火がきれいでせつなくて、自然にお互い肩を寄せ合った。

二人で手をつないで寝そべった砂浜は、まだ温かくて、心地よい。

空に浮かぶ明け方の星座は、冬の季節の物が見えていて、二人で指さしながら名前を口にする。

「あれがオリオン座。わかる?」

彼がそういって指で指し示す先には、中央に三つの星を抱える四角形の星座。うん、とうなずく私の頭を、彼は優しくなでた。

「オリオン座の三つの星でできる線を、ずうっと下に引っ張っていくんだよ。ほら、青白い星が見えるだろう?」

言われて空に線を描く。もう薄明るくて見えにくいはずの星の中で、その星はまだ明るく輝いていた。

シリウスっていうの。俺の一番好きな星」

帰り道、海岸沿いの道をゆっくりと走る。左側に広がる海はちょうど夜明けで、赤く染まってきれいだった。

二人で行きも帰りも歌って笑っていた。

信号待ちの間に彼が煙草に火をつける。他の煙草の匂いは苦手だけど、セブンスターだけは大好きになってた。

青になって踏み込むアクセル。

横からつっこんできたトラック。

…あっという間だった。

一ヶ月後。

意識を取り戻したとき、彼はもう土の中だった。

不思議と涙は出ない。

現実を受け止めることのできない私は、一年たった今でも相変わらずだ。

彼がいつも中指にしていた、大好きなシルバーの指輪は、今私の胸を飾っている。

彼の大好きな真っ赤な缶コーヒーは、どこのコンビニにだっておいてあるし、コンバースのオールスターを履いている人だってたくさん。

そして、あの煙草の匂いは未だに私を振り向かせる。

二人がつきあってから二度目の夏の終わり。

今日、去年と同じ砂浜で、今年は一人で星を見ている。

蒼い星は、彼の星。

私もその隣で一緒に笑っていたいよ。

これからもずっと、きっと大好きだから。

永遠のお別れなんて、信じられないよ。

また、来年、会いに来るよ。

シリウスっていうの。俺の一番好きな星」

 うむ


基本的にポジティブでいようと思っている。
常に最悪の結果を念頭において行動してしまうから、思考回路くらいがんばって明るくしておかないと、いつでも落ち込めるじゃん。


火曜日に練習するバンド、まだ一曲まともに弾けないけれど、多分なんとかなるんじゃない?とか思いこもうとしているあたりがポジティブでしょう。


だって、毎朝電車に乗っているときに、今いきなりレールが壊れたら、電車ごと川に落ちちゃうなあ。この川、もう下流で浅いから、この高さ落ちたら全員死んじゃうかもしれない…まてよ、脱線した瞬間にあそこにつかまって…とか考えているくらいだから、本当それくらい夢を見させて欲しい。
(会社のオフィスが八階で、火事がおきたらエレベーター止まるだろうし、階段の扉は鉄製だから熱で変形したらあけられない、ていうか熱くて多分とってを触れない。しかも平常ですごく重たいから、みんななすすべもなく死ぬ)(ていうか会社の入っているビルのエレベーターは時間が経過過ぎると問答無用でしまるシステムだから、それを知らずに乗ろうとして、誰か一人くらい遠からず挟まって死んじゃって問題になるんじゃないだろうか)(小牧に空港があって、各務ヶ原にも航空自衛隊があって、よく空中を飛行機が飛んでいるんだけれど、いきなりエンジントラブルになってうちのうえに落ちてきたらどうしよう)(会社に行っている間に地震があったら、リビングの上が私の部屋で、グランドピアノが置いてあるから下手したら床が抜け落ちるけれど、そしたらもう高齢の私の愛犬はそれを察知できずに圧死してしまうんじゃないだろうか)




などなど。
悩みはつきないのです。

 足元は見えているのか


自分を限界まで追い詰めるのがすき。
限界まで追い詰めた後、限界が限界じゃなくなるから。
まだまだ精一杯やっていなかった。もっと出来るんだ、って気づかされる、その感覚がすき。



人にNoといわないで生きていたい。
可能な限りすべてを完璧にしていきたい。
私の身の回りの人たちが、私の時間やあらゆるものを削ることで楽しい気持ちを味わえるのならそれでいいじゃないか。
でも、私は常に余裕のある振りをしていないとね。
格好いい大人ってのは、私にとってはそういうもん。
できることだけを完璧にこなす人も、格好いいとは思うけれど、それは私の目指す人間像ではない。


ぎりぎりまで自分を追い詰めていれば、今よりもっともっと、自分の懐が深くなるんじゃないか。そう思うとワクワクする。



忙しいとか、辛い顔とか、絶対言いたくないししたくない。
そう強く思うときっていうのはたいていすごく幸せか、辛い状況だ。



さて、今はどっちだ。