雨が降っていた。
しとしとしとしと、その雨はやむ気配がなく、巨大な総合ターミナルのはずの駅のホームには、人影がまばらだ。
携帯電話で話をしていたのは、声の低さからおそらく男性だろう。
私は、彼と何時にどこへ集合するかを電話で再度確認した。
集合時間まで30分。
ここから私鉄の駅まで15分ほど歩いて、その駅から電車に乗ればすぐにつく。
だが外は雨。正直私はしんどいな、と思った。
タクシーを使うにも、あいにく所持金はなく、カードももっていない。財布自体を持ち合わせていないようなのだ。
しかたない。
私は斜め下に長く敷かれている線路を見つめた。
お金も何もないときに、たまに冒険気分で使う犯罪行為を、実践することにした。
なんてことはない。
プラットホームの端からちょっと離れたところに、地下点検用の入り口があるのを私は知っていたのだ。
その地下点検通路は線路沿いにずっと続いており、私鉄駅地下に広がる地下街と壁一枚隔てている部分が存在する。
そこには非常用の扉があり、その扉の合鍵を、こっそり作って常にもっていた。
私は駅員に注意を払いながら、ホームの先のほうへさりげなく歩みを進める。
ほら、だからさっき電車はいってしまったのよ。次は何分おきなのか駅員さんに確認しましょう。と、途中すれ違った老婦人が夫らしい初老の男性に話しかけている。
私は彼らをやり過ごすと、ごく自然にプラットホームの先端から飛び降りた。いつものようにきれいに着地する。
しかし、そのときいつもと異なり、ジーンズのポケットから携帯電話が転がり、レールにあたって金属音を発した。
私は背中から冷たい汗がにじみ出てくるのを感じながら、次の瞬間勢いよく駆け出した。
何しろ、見つかってはならないのだ。

駅員さん、あの人、線路を走っているわ。

背中の向こう側で先刻の女性の声を聞く。彼女の声は、先ほどのものとは異なり、若干恐怖のような悲鳴に近いものを孕んでいた。
私は彼女の感覚のよさに軽く舌打ちをすると、なおのこと足に力をこめた。
後ろにそびえる巨大な建物から、犯罪者をせきたてるようなサイレンが鳴る。
たまに振り返るとは視界に入る赤い光は、警備員や駅員が手にもつ赤い警告灯で、それはだんだんと大きくなっているようだった。
早く、地下通路の入り口に入らなければ、今ならまだ、どこへいったか気づかれずにすむのに。
そう思う私の焦りをあざ笑うかのように、近いはずの入り口が見当たらない。
後ろの人影はどんどん大きくなり、心臓が悲鳴をあげる。
だめだ、つかまる。
待ち合わせに、間に合わない。
ところで、私は誰と何のために約束をしているんだ。
あきらめて立ち止まった私を、駅員が捕まえる。
こんなことならば最初から雨に打たれて15分歩けばよかったんだ。
そう思ったがあとのまつり。
この後、私はおそらく駅の地下にある収容所で、折檻を受けることだろう。それが法律だ。
そうすればしばらく出てこれないかもしれない。
約束を守れなくなったことに軽く舌打ちをし、私は駅員にその態度を咎められ、頬を思い切り殴られた。

ここで飛び起きたため、この後不明。

 生殺し


あのね、コタツの上におきっぱなしにされていりゃあ、嫌でもきになるっつーの。
生殺しだよ、早く12月にならないかな。





昨日は身体の具合がいつもと違った。
ん? でもそれが正常なんじゃね…? 

 下に思考、斜めに行動


胃が痛いって?
それは恐怖のせいだ。
しかも全然人の為の恐怖じゃなく、100%自分自身の為だ。
まぁ、今に始まったことじゃない。
わがままなのも、甘えられるのがすきなのも、面倒を見るのがすきなのも、全部同じ理由だろ。
そうやって他人を利用していないと、己を確立できないのに、いまさらねえ。
だから考えるな。考えるだけ、落ち込むよ。